「怒」り
札幌に戻ってきた。
家を出てから三時間少々というところか。
東京を出て四年目ということもある、成田空港まで電車で行って、飛行機のって、また電車というのは、ちょっと疲れてきた。
いつからこんな疲れるようになったんだろうか。
最初の頃は、飛行機と言うだけでわくわくしていたような記憶がある。
まだ十分若いとは思うけれども、昔に比べて、新しいことが少なくなってきたなと感じる。
だから物事に驚きもあまりないのかもしれない。
淡々と。
淡々と。
淡々と毎日が過ぎていく。
大人になっていくというのはある意味で物事に対して無感情になることなんだろうなと最近思う。
冷静にそれを眺めなれること。
“落ち着いた”という言葉は客観的に見たら良い意味だけれども、果たして自分自身それでいいのかと問い返してみるといささか困る。
最近、激しく喜怒哀楽を感じたことがあっただろうか。(いや、その意味で僕は相対的にはある方だろうな)
ただ間違いなく10年前の自分より物事に鈍感になっている気がするし、昔の純な感覚は失いつつあることを自覚はしている。
昨日、帰ってきた足で、友人と飯を食ってから映画を見た。
「怒り」。
監督は「フラガール」や「悪人」で有名な李監督。
俳優陣は渡辺謙を筆頭に妻夫木聡、綾野剛、宮崎あおい、広瀬すず。
八王子市で殺人事件が起こる。犯人は逃走。犯人はどこへ行ったのか。
そこからストーリーは都会、離島、漁村を舞台へ。三つの舞台にそれぞれいる出所不明の男たち。かれらは殺人犯なのか。それとも。という話。
切り口は見る人によって何通りにも分かれるだろうという示唆に富んだ作品だった。
だれもが抱える理不尽、憤り。つまり、それらは「怒り」へとつながる。
ただだれしもが幸せでありたいと願って生きている。
理不尽な中に生きているが故の人への疑心暗鬼。
そのジレンマが感情的に描かれていた。
個人的には今年NO1の作品だと思う。
そして、あなたの憤りはどこへ向かっていますか?という自問へとつながる。
何気ない憤りが副作用の様に無意識に起こす変化に僕は恐らく気づいていないだろうな。
それゆえに楽しめるはずのものを楽しめず、得れるものを失っていると畏怖を覚えた。
久しぶりに映画で泣いた。
感情を抑え方の初歩を覚えてしまったあまりに何かを見逃すことはしたくない。
大人になんてなりたくない。
2016.09.22
こばやし